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『福祉専門職のための総合的・多面的アセスメント』を読んで

福祉専門職でソーシャルワーカーはたくさんいます。介護技術のプロである介護福祉士の資格を持っている人でも、」場合によっては利用者の家族や本人の相談に乗ることだってたくさんあります。

その中でもソーシャルワークの基本中の基本としてのアセスメントがあります。相談援助職に就きたいと思っている人や現在、相談援助職で仕事をしている人はこの福祉専門職のための総合的・多面的アセスメントは読んでおいて損はない本です。

読んだ後は、クライエントにより優しく接することが出来ます。

そんな気持ちになる本です。

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『福祉専門職のための総合的・多面的アセスメント』の著者

渡部律子先生は1953年生。1978年関西学院大学大学院修士課程修了。1983年ミシガン大学大学院社会福祉学修士(M.S.W.)取得。1988年ミシガン大学大学院心理学修士取得。1990年ミシガン大学大学院哲学博士(Ph.D.専攻:ソーシャルワーク・心理学)取得。現在、日本女子大学人間社会学部社会福祉学科で教授をされています。

私は主任介護支援専門員の研修ではお目にかかったことがあります。アメリカでソーシャルワークの勉強をされた時は辛くて毎日泣いていとこの本に書いてありました。

大学で教授をされるぐらいの方は勉強が出来るだけでなく、大変な努力と苦労をされているのですね。

『福祉専門職のための総合的・多面的アセスメント』の特徴

アセスメントの重要性

アセスメントの質が生死を分けるともこの本では言っています。そのことについて2つの事件を例に挙げています。

2018年に起きた目黒区の児童虐待死事件。リスク・アセスメントが適切に行われていなかったことを指摘している。女児に外相があったが、それを「軽微な傷であった」と評価し記録されてしまったがために、子供を保護できなかったのである。

福祉専門職のための総合的・多面的アセスメントより引用

2012年1月に北海道で起きた、3度も福祉事務所を訪れながらもサービスの需給に至らず40代の姉妹が遺体で発見された事件。暖房も止められ、冷蔵庫も空っぽであった。この姉妹の妹には障害があり、両親はすで他界し頼る人もなく、姉は体調不良のために就職もままならず、3度に渡り区役所に窮状を訴えていたとのことである。しかし、担当者は「本人が申請の意思を示さなかった」として、明らかに困窮状態がわかるはずのこの姉をそのまま帰らせた。

福祉専門職のための総合的・多面的アセスメントより引用

まさにアセスメントが生死を分けてしまったというような事件です。

アセスメントの失敗事例も載っている

ニュースで取り上げられる事例には私達も仕事ではなかなか遭遇しませんが、万が一こんなことがないように日頃からアセスメント力を磨く必要があります。身近な失敗事例なんかも載っていて、どこがダメだったかを解説してくれる作りになっています。

失敗事例だけでなく、もちろん成功事例も記載されていますが、著者が高齢分野で働いた経験が長いらしく、高齢分野の事例が多いです。

アセスメントに対する意識改革

実に丁寧にアセスメントがいかに大切かを認識させられます。アセスメントはこういった方法でするというよりも、アセスメントに対する考え方や心構え、クライエントに対する姿勢などが多く記載されています。

自分がワーカーとして成長するためには何が必要なのか?等、どちらかというと読んでいる人の意識を改革していくことが多く書かれていいます。

社会福祉士や精神保健福祉士の勉強をした人だと読みやすい

事例を使ってアセスメントのどこに気を付けなければいけないのかを説明していき、先人たちが考えた理論と比べたりすり合わせていくような感じで進められています。

もちろん専門用語や聞いたことがない理論や学者の名前が出てくるので社会福祉士や精神保健福祉士の勉強をしたことがない人はある程度、苦労するかもしれません。

ベテランの相談員が読んで反省したこと

この本は各章の冒頭で読者に対して質問が書いてあります。もう考えさせられる質問ばかり、著者は投げかけてきます。

それを直接は解決してくれるという訳ではなく、読者がこの本を通して自分で考えていくスタイルをとっているので、私が特に印象に残ったことを紹介します。

ソーシャルワークの使命とアイデンティティ

この本にある医療相談員の話が載っていました。

私の仕事は院長の考えを患者さんに納得してもらえるように伝えることです。つまり、彼女にとってのワーカーの仕事とは、所属組織の方針をクライエントに納得させることであった。彼女は病院長の秘書として雇用され、秘書としての有能さを買った院長の勧めにより通信教育で資格を取得しワーカーになったということであった。

福祉専門職のための総合的・多面的アセスメントより引用

仕事をする中でソーシャルワーカーとしてのアイデンティティを身につけないといけないということが書かれていて。「はっ!」としました!!

日々淡々と、相談業務を作業的にこなしていたことに反省・・・

そうか!私はソーシャルワーカーとしてアイデンティティを身につけなくてはいけないんだな!!と改めて思ったしだいであります。

アセスメントと省察性 

省察自分のことをかえりみて考えめぐらすこと

省察的実践を志すその人自身がまず自覚を持ち、自分の実践をしっかりと見据えて言語化し、そこで見出した課題にたいする姿勢を確立することである。

福祉専門職のための総合的・多面的アセスメントより引用

自分の仕事を振り返るということの大切さ。そして、自分の仕事を出来るだけ言語化する力というのはソーシャルワーカーにはとても大切ということに気づかれます。

自分を振り返るためには、日々の仕事で気づいたこと、気になったことなどを記録として書き留めること。そして、単に自分の実践を振り返るだけでなく、「行動しながら考えること」が重要と筆者は言っています。

そういえば、自分が仕事で上手くいったことや失敗したことを深く振り返っていなかったので、後輩に教えるときに困ったことを思い出た・・・

アセスメントとスーパービジョン

真に効果的なスーパービジョンは対話をはるかに超えたものである。スーパーバイザーは、スーパーバイジーとともに説教的に共同作業を行い、バイジーがケースのすべての側面を理解し、自らの決断の背後にある理由を明確に述べることができるところまでたどり着けるようにする。ここには、バイザーとバイジーの真剣さ、クライエントへの援助に対する責任と覚悟が表れている。

福祉専門職のための総合的・多面的アセスメントより引用

スーパービジョンというのはとても奥が深い。スーパービジョンに対する考えが変わりました。まぁ元からあんまり理解してなかったということでしょうね(笑)

バイザーは対人援助職者としての専門性を持ち、バイジーの力量を見極め(バイジーの力のアセスメント)、その上でバイジーの成長を最大限に促す方法を考え、実行できる」ことが必要

福祉専門職のための総合的・多面的アセスメントより引用

そして、バイザーとしてスーパービジョンを行うってすっごく難しい!!もっともっと勉強が必要になってくるのだと思います!!

『福祉専門職のための総合的・多面的アセスメント』のまとめ

相談援助技術の知識は勉強で身に着くことが出来ますが、多くは実践で身に着けることがほとんどです。しかし、自分の行っている実践がどこまで正しいか、正しくないかはきっと見えずらいと思います。

時にはこういった仕事につながる本を読んで、自分の仕事に関しての振り返りや知識を増やしていくことは大切なことですね!!

以上です!読んでいただいてありがとうございました!!

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