介護業界で中間管理職を10年以上続けているたっつん(@enjoywelfare)です。
中間管理職の職務の中で、部下の評価をすることは難しい仕事の一つです。「福祉の仕事なのに人事考課は向かない」と思っている人もいるかもしれません。
しかし、福祉業界でも人事考課制度を取り入れている企業は多くなっているのが現状です。
そして、社会福祉士国家試験でも人事考課については試験範囲になっています。
今回は社会福祉国家試験のテスト範囲での人事考課制度を説明していきます。
【社会福祉士試験】福祉職員の人事考課制度と注意点

人事考課
人事考課とは、従業員の能力や勤務態度、業績などあらかじめ決められた基準に基づいて職員を評価することです。人事考課の方法として、目標管理制度や多面評価制度(360度評価)があります。
目標管理制度(MBO)
目標管理制度はMBOと呼ばれています。マネジメントバイオブジェクティブズでMBOです。
組織全体の目標と従業員の個々の目標を達成することを目指します。1954年にピータードラッガーが提唱した組織マネジメントの考え方です。
会社と従業員のベクトルを合わせて目標を設定を行います。
組織の目標の中に従業員自身の目標を見つけることで、会社の成功に貢献しているという参画意識が持ちやすく、モチベーションアップが期待できる制度です。
多面評価制度(360度評価)
上司だけでなく、部下や同僚、顧客などから多角的に評価を得る制度です。複数の評価者を入れることで客観的かつ公平な評価を目指します。
人事考課制度での注意点
人事考課を行う上で求められるものは、正確に評価することと、評価される側に納得してもらうことが重要です。そこで人事考課をする際には注意をしなければならないことがいくつかあるので紹介します。
寛大化傾向
実際よりも評価が甘くなることです。自分自身が上司から正当な評価を受けていないと考える人や指導力がない上司がおちいりやすい傾向です。
中心化傾向
全体的に評価が中心(平均)に集まる傾向。評価を受ける人に対して差をつけることが心理的抵抗が強い人は中心化傾向になります。
また、日ごろの部下への観察力不足で能力の違いに目がいかないと中心化傾向になってしまいます。
ハロー効果
ある部分の評価が全体の評価に及んでしまい、正常な評価が出来なくなることです。自分の価値観に合致する物事について、何か一つでも良い言動があると全て良く思ってしまう。
逆に自分に対して横柄な態度をとるなど、何か一つでも悪い言動があると全ての項目で悪い能力基準だと考えてしまうなど、偏った先入観や固定観念、感情をもちやすい考課者が陥りやすいことです。
極端化傾向
少し良ければ極端に良くして、少し悪ければ極端に悪いという傾向です。
遠近効果
直近の出来事が全体の評価に影響を及ぼしてしまうことです。
考課実施時の直前の事実にばかり目がいってしまいます。直前の事実は大きく見えて3か月前などの過去の同等の事実を過少に見てしまうために起こってしまうことです。
その場の感覚やイメージのみで判断してしまう人がおちいりやすいです。
対比誤差
出身が同じなど親近感のみで甘く考課してしまったり、自分の若いころと比較して厳しく考課するなど、求められている期待水準が何かを考えずに評価してしまうことです。
また自分の過去における環境や自分の能力とを比較基準に考えてしまう考課者がおちいりやすい誤差です。
論理誤差
考課者の論理に影響されて評価がゆがんでしまうことです。
「ケアマネの資格をもっているから介護保険のことは詳しいだろう」や「この人は何回も仕事を変えているから難しい仕事は任せられない。」という風に考課者の論理で評価してしまう誤差になります。
福祉業界の人事考課は難しい
福祉業界では良い介護をしたからといって、会社の業績が上がるわけではなく給料に反映させることが出来ません。相談業務の場合も悩みを解決したらと言って会社の業績が上がることもありません。
つまり福祉業界では従業員の個人的な数値目標がなく、職員を評価することがとても難しいことは事実です。
しかし、一定の成果について触れず、褒めず、認めず、悪しき言動についてもとがめず、いつでも特別な実害がない限り皆同一。というスタンスだと組織として不健全になってしまいます。
福祉業界が良くなっていくためにも人事考課は必要なのかもしれません。
以上になります!読んでいただいてありがとうございました!!
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