サイトアイコン エンジョイHukushi

リアルな介護現場を題材とした小説で「安楽死」や「尊厳死」を考えた

介護業界にいて忘れもしない事件が2014年に起きた川崎老人ホーム連続殺人事件。衝撃なのが職員がベランダから3人もの入居者を転落させて殺害してしました。

「手がかかる人だった。」「介護の仕事にストレスがたまっていた。」という動機も一部あり、介護業界の闇があからさまになった事件でした。(2018年には元職員に死刑判決が出て現在は控訴中)

『介護士K』は川崎老人ホーム連続殺人事件が題材になっています。

作家は医師の久坂部洋先生。さすがはお医者さん。実際の介護業界のことがわかって書いています。

高齢化社会の行く末。家族が虐待をしてしまう心境。おまけに介護現場で職員が話している利用者に対しての愚痴まで。

介護業界に10年以上いる私でもうなずけるリアルさ!!「この話どっかで聞いたな?」なんて思いながら読み進めることが出来ました。

しかし、この小説はそんな介護業界のリアルさだけを描いている小説ではありません!マジで考えさせられます!!高齢者虐待とは?安楽死ってなに?死ぬことって救いなの?俺らの仕事って本当に世の中の役に立ってるの??と色々なことを考えさせられます。

特に介護業界で働いている方は是非、読んでいただきたい!

そしていっしょに考えよう!!今後の高齢化社会と生と死について!!

スポンサーリンク

リアルな介護現場を題材とした小説で「安楽死」や「尊厳死」を考えた

『介護士K』のストーリー

老人ホームのアミカル蒲田という施設で入居者がベランダから転落して死亡した。

まさか、誰かに投げ落とされた??

そんな疑問を思ったルポライターの朝倉美和はある人物に興味を持つ。それが第一発見者となった小柳恭平。愛くるしい笑顔でアミカル蒲田でもマスコット的な存在の21歳の若者。将来は医者になりたいという夢を持ちながら働いている。

だが取材を続けていくと恭平には違った側面があることが徐々にわかってくる。なかでも死に対しては確固たる信念のようなものが恭平にはあります。

「楽しみも喜びもなくて、つらいつらいと繰り返してばかりの人。そういう人にとっては死は救いなんです。」

そして、アミカル蒲田では2人目、3人目と入居者が不自然な理由で死んでいく。果たして恭平は利用者を殺害した犯人なのか・・・。

心に残る言葉

特に施設に訪問診療に来る黒原医師の言葉がズシズシと響いてきます。

優しさには快感が伴う

確かに利用者に優しくすると、「ありがとう」って言ってもらえるのは気分はいいし、やりがいを感じる。介護業界で働いている人は高い給料をもらっていなくてもやりがいで続けている人も多いはず。

そして、少子高齢化には未来がないような言い方もします。

介護に多額の公費を注ぎ込んでも、優秀な人材を集めてみても、年寄りを喜ばすだけで生産性にはつながらない。優秀な人間は国の生産性と技術の向上に資するべきだ。

介護業界にいる俺たちって確かに生産性はない。世の中全体を見ると役になっていないのか?高齢者の支援が甘えさせているだけで良くない?

黒原医師は小柳恭平にもこんな言葉を言います。

俺が別の施設で診ている九十二歳の女性がな、この前、息も絶え絶えにこう言ったよ。先生、わたし、若い時、しっかり歩いたから、長生きできると聞いて、毎朝、早足で散歩したんですけど、あれが悪かったんですかねぇ、とな。その患者は肺気腫で、息をするのも苦しいんだ。彼女は今、心の底から長生きを悔やんでいる。

黒原医師はまさしく安楽死肯定派。確かに介護の現場にいると早く死にたい。早く迎えに来てほしいという高齢者はたくさんいます。

本気かどうかは別として仕事で出会う高齢者の3分の1ぐらいは早く死にたいと言っています。

それでも、「死なせるのは慈悲なんです。」という小柳恭平や黒原医師の考えは行き過ぎていると思えます。でも真っ向から間違っていると反論できる言葉が見つからないのも事実。

苦しむ人にとって死はある意味救い。」という言葉は安楽死を望む人にとっては希望なのかもしれないと感じてしまいます。

安楽死をネットで調べてなんとなくスッキリ!

『介護士K』を読んで思い出したのが、京都のALSを患った女性が二人の医師に頼んで安楽死をとげた事件です。医師の二人は嘱託殺人罪で警察に捕まってしまいました。

この二人の医師は良いことをしたのでは?と思った人も多いと思います。私も『介護士K』を読んだら余計に思ってしまいました。

そんな中、色々と調べていたら日本尊厳死協会という団体があることがわかりました。ずばり日本尊厳死協会では尊厳死というものを尊重していて安楽死は推奨していません。

日本尊厳死協会のホームページはALS患者に対する嘱託殺人事件報道に関する日本尊厳死協会の見解というものを出しています。この見解を読むと、今回の捕まった医師2人の判断は思い込みによる判断からの行為と結論付けています。やっぱり簡単に人を死に導くのは良くないという見解なのです。

この日本尊厳死協会の見解を見てなんとなくスッキリすることができましたが、『介護士K』はそんだけ色々と考えさせらえる小説です。すごい・・・是非、読んでみてください!!

久坂部羊の介護を題材とした他の作品

以上になります!読んでいただいてありがとうございました!!

モバイルバージョンを終了