子育てや仕事で忙しい時期に親の介護が始まると鬱陶しく思ってしまうことはないでしょうか?
実際に高齢者の自宅を訪問し話を聞く仕事をしているたっつんです。主任ケアマネです。
「子供に早く施設に入れと言われた」
「この前、喧嘩したら早く死ねと言われた」
利用者から子供に無慈悲な言葉を浴びせられた話を聞くことも少なくありません。子供としては親が認知症や寝たきりで自宅で過ごしていると、心配で老人ホームに入ってほしいという気持ちになるのは当然。
ついつい、きつい言葉で親を傷つけてしまうこともあるでしょう。でも高齢になった親は総じて住み慣れた自宅で過すごしたいという意向が強くあります。
意思能力が低下し何もわからなくなれば老人ホームに入居させることはできますが、自分自身の意向が言える場合は、十中八九「施設になんか入りたくない!!」と大きな声で言うでしょう。
「頼むから老人ホームに入ってくれ!」と子供達が土下座しても、親も「頼むから家に居させてくれ!」と土下座合戦になってしまった修羅場を実際に見たこともあります。
このような親と子の溝が深くならないように、10年以上も在宅介護のケアマネをしてきた筆者が2つの秘策を紹介します。たった2つで親と子の溝が広がらず、お互いの希望を叶えることが出来るのです。
それが親子の距離感と老人ホームのような在宅サービスです。
施設に入りたくない親と心配する子供の希望を叶える2つの秘策
親子の距離間
大前提として高齢になった親との同居は極力避けたほうが良いです。自宅が広く、親と生活空間を全く別にできるのでしたら問題はないと思います。例えば、1階に親が住み2階に子供家族が住むといった方法がとれるのでしたら同居も問題ないでしょう。
しかし、家が狭く同じ生活空間で両親と自分の家族が住むと問題が勃発することは多いです。嫁や婿という他人が入ることによってお互いが気を使うことは明白です。
では親子が別に住む場合はどこに住めばよいでしょうか?
ずばり、親の自宅の近くに住むことをオススメします。もし可能であれば、歩いて5分以内のところに住むと両親に何かあればすぐに駆け付けられるし、生活が別々になるのでベストです。
よく言われるスープの冷めない距離に住むということです。スープの冷めない距離というのはスープを持って行っても冷めないぐらい近い距離という意味です。介護業界的には両親の面倒が見やすい距離を表しています。
スープの冷めない距離に子供が住んでいると、親も子供も幸せな介護生活を送っていることが非常に多いです。本当に良い距離間だと思います。
高齢になった親は子供達からすると心配です。でも正直、面倒なこともあります。心配だからすぐに駆け付けられ、深入りしない距離に住むことによって適度な塩梅で親の面倒を見ることが出来るのです。
自宅で老人ホームのようなサービスを使う
老人ホームに入ってほしいけど、親が自宅に居たいと言った場合は定期巡回随時対応型訪問介護看護というサービスを利用します。定期巡回随時対応型訪問介護看護は、2012年4月に創設されたサービスです。
定期巡回随時対応型訪問介護看護を導入すると、自宅にいながらほぼ老人ホームに入居しているようなサービスを受けることが出来ます。定期的にヘルパーが自宅を訪問しておむつ交換や入浴介助、食事介助、買い物、洗濯、掃除などをしてくれるのです。
さらに看護師も定期的に来てくれるサービスも組むことが出来ます。さらにさらに、デイサービスや訪問入浴の在宅サービスも併用可能となっています。ショートステイだって利用できてしまうのです。
おまけに
ベッドから落っこちて動けない
トイレをウンチで汚してしまって大変だぁ
などの緊急的なことが起こったら緊急通報用のボタンを押せばオペレーターにつながり、必要時には20分前後でヘルパーが駆けつけてくれます。
定期巡回随時対応型訪問介護看護を導入できれば、本人が納得するまで自宅で過ごすことが出来きます。併用して往診も導入しておけば健康面でも安心です。
しかも有料老人ホームに入るよりも費用が押さえられます。基本的に介護保険の支給限度額以内で介護サービスを利用するのであれば、施設に入るよりも在宅で暮らす方があきらかに低コストで生活することができます。
介護施設は介護費以外に食費、居住費、管理費、医療費など色々な経費がかかります。安い有料老人ホームでも1カ月20万円近くかかることもざらにあります。
安いと言われる特別養護老人ホームですが最近はユニット型個室の特別養護老人ホームが多く、ユニット型個室の場合、助成が受けられない人だと月に約15万円~17万円ぐらいかかってきてしまう場合もあります。
自宅が持ち家だったら居住費はかからず、単純に今の生活に介護費用と医療費用が上乗せされると考えておけばいいのです。
定期巡回随時対応型訪問介護看護は事業所数が少ない
定期巡回随時対応型訪問介護看護のサービス事業所ですが、まだまだ事業所数が少ない状況です。絶対数が足りず、最後まで自宅で過ごしたいと思っている高齢者のところにサービス導入がいきわたっていないのが現状です。
原因は夜間対応するヘルパーの数が足りないからです。この人材確保の政策をしっかりと介護保険制度で整備できれば、自宅で過ごしたいという高齢者本人の意向と親のことを心配している子供の意向を払拭できるのではないかと思っています。
実際の利用者の声(要介護4の夫と要介護1の妻と二人暮らし)
「パーキンソン病で夫と二人暮らしだけど、ヘルパーさんや看護師さんが来てくれるので安心。施設なんて入らなくても全然困ってない。それに80過ぎて引越しをするなんて面倒よ。」
是非、この定期巡回随時対応型訪問介護看護のサービスが増え、自宅で最後まで安心して暮らしていける高齢者が増えることを願っています。
親子は最後まで仲良くがベスト
介護のことで親と子が不仲になり、お互いを罵り合っている間に親が最後を迎えてしまったら後悔すると思います。冒頭で「早く死ね!」と言ってしまったご子息の方もきっと後悔していると思います。
大切な両親に罵声を浴びせるような事態にならない為にも、是非、両親との距離感や介護保険のサービスについて調べてみてください。
今回は以上でーす。