こんにちは。社会福祉士のたっつん(.@enjoywelfare)です。
「大切な家族を殺すなんて鬼畜外道だ!」と思う方は『近親殺人: そばにいたから』を読むとイメージが変わります。
ノンフィクション『近親殺人』を読みました。石井光太さん著書の作品を読むのはこれで2作目。
地域包括支援センターで仕事をしていると悲惨な事件になりそうな家族と関わることがあります。
さいわい私の関わったケースでは大きな事件になったことはありませんが、『近親殺人』のような事件に成りえる紙一重のようなこともありました。
引きこもりの息子が親を殴ってしまったり、貧困で食べるものなく追い詰められてしまう現場も見てきました。
親族間での殺人事件の割合は近年では5割強まで増えているとのことで、私も曲がりなりに福祉の世界で仕事をしている者として考えていかなければならないテーマの本です。
相変わらずトラウマ級の事件内容で読むのはしんどいです。しかし、私達のそばで起きている現実のことです。
家族という大切な人達が起こしてしまう殺人とは、なんて悲しく切ないのでしょうか。
是非、読んでほしい一冊です。
今回は実際の事件をネットで調べならが 『近親殺人』 読みました。
※3章の「ATMで借りられなくなったら死ぬしかない」と7章の「母は、妹と弟を殺した」は見つけられませんでした。
事件の真相は!?ニュースだけではわからない『近親殺人』の真実
マジ消えてほしいわ
30代の娘2人が母親の介護を放棄し、死へと追いやってしまった事件。幼少期から母親との関係性が悪かったことで事件へと発展しまいました。
夫が病気だったため、必死に仕事や家事をこなしてきた母親は精神的にバランスを崩してしまい娘達につらく当たります。そして夫が亡くなりさらに状況が悪化していきます。
幼かった娘達は一生懸命に生きてきた母親を理解できなかったのだろうと思う。悲しい・・・
父は息子の死に顔を三十分見つめた
元教師の父親が精神疾患の息子に向き合い、苦しみながら尽くしてきたが最終的に命を奪うことになってしまった悲しい事件。
事件が起きる直前の描写で、かつて息子から生きる意味を問われた時に父親が息子に送ったメールがとてつもなく切ないです。涙が出ました。
あいつがナイフで殺しにやってくる
3姉妹の長女が精神疾患を患い、親や姉妹や自分の子供にまで暴力的になり家族中が疲弊し、やがて取り返しのつかないことへと発展してしまう事件です。
長女が精神疾患を患った理由が第1子を出産し、育児ストレスから心を病むようになったことが驚きでした。
元看護師の妻でさえ限界
老々介護の末の殺人事件です。地域包括支援センターで働いている私には身近に感じた事件。ケアマネジャーも出てきます。
夫の介護に励み状態を改善させようと必死に頑張る妻→限界を迎え介護施設に入れることを決意したがお金がなく施設に入れることが出来ない→介護者が鬱状態に陥る。
在宅介護で良くあるパータンです。本当に身近に感じた事件でした。
夫の愛情を独占する息子が許せない
母親が5歳の実の息子を13階のマンションから投げ落としてしまう事件です。衝撃です。この母親も精神疾患を患っていての行動ですが、夫の愛情を独占する息子が許せないという動機は聞くに堪えません。
しかし、この母親の生い立ちに大きな問題がありました。児童虐待には負の連鎖が重なって、最終的に罪のない一番弱い子供が犠牲になるという構造です。
同じく 石井光太さん著書 の児童虐待をテーマにした『鬼畜の家』で紹介されている事件でも、負の連鎖の構造が浮き彫りになっていました。
最後に
7つの事件の中では介護、ひきこもり、貧困、虐待、精神疾患といった仕事で良く聞く言葉がキーワードになっていました。
身近に感じられる事件といえどもネットニュースの記事だけでは事件の真実や背景、当事者の葛藤や苦しさが分からないと改めて思いました。
大切な家族を殺してしまうのは1人の極悪人だけの凄惨な事件ではなく、様々な事柄が重なったことによって起きてしまう悲しい悲劇なのではないかと感じさせる一冊でした。