地域ケア会議の企画運営をしたことがあるたっつん(@enjoywelfare)です。
介護業界ではサービス担当者会議、個別ケース会議、事例検討会などの様々な話し合いが行われいます。
地域ケア会議という言葉を聞いたことがない方もいらっしゃると思いますが、在宅介護では重要な会議の一つです。
地域ケア会議は2015年の介護保険の法改正で制度に位置づけられました。
という聞こえの良い目的が設定されています。しかし、この地域ケア会議が各市町村に設置(努力義務)されることになった背景には国の本当の目的があるのです。
という訳で今回は地域ケア会議の裏事情を紹介します。
【介護保険の裏事情】自立支援型の地域ケア会議の本当の目的とは?
地域包括ケアシステム
地域ケア会議の紹介の前に「地域包括ケアシステム」という言葉を説明しましょう。
地域包括ケアシステムとは
○ 団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現していきます。
厚生労働省より引用
○ 今後、認知症高齢者の増加が見込まれることから、認知症高齢者の地域での生活を支えるためも、地域包括ケアシステムの構築が重要です。
○ 人口が横ばいで75歳以上人口が急増する大都市部、75歳以上人口の増加は緩やかだが人口は減少する町村部等、高齢化の進展状況には大きな地域差が生じています。地域包括ケアシステムは、保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要です
要するに地域包括ケアシステムとは75歳以上の高齢者が急激に増える2025年を目標に、あまり医療費や介護費を使わないように地域で高齢者を支えていくという意味合いがあります。
高齢者が住み慣れた地域で病気や障害を抱えても暮らしていけるようにする社会を作っていきましょう!!と聞こえの良いお題目で国民には説明しています。しかし、裏には
高齢になっても医療費を使わないように病気しないで元気で過ごしてね
買い物とかは介護保険を使わないで地域の人の協力でなんとかしようね
少子高齢化で介護保険や医療保険が莫大に増えていったら、若い世代の保険料が高くなります。つまり地域包括ケアシステムは社会保険給付費の抑制をする機能も含まれます。
国の医療費と介護費を抑えたい!
そんな思いが盛り込まれたシステムなのです。
地域包括ケアシステムを実現するために地域ケア会議を推進する
その中で注目されたのが地域ケア会議です。
地域ケア会議は5つの機能があります。
5つの機能の中に国が推し進めたい介護給付費を抑えられる機能が含まれています。それが個別課題化解決機能の中の個別ケースに関するケアマネジメント等の支援の質の向上になります。
介護給付費を抑えることを実践してやってのけたのが和光市の「自立支援型の地域ケア会議」になります。
和光市の自立支援型の地域ケア会議
地域ケア会議が2015年の法改正で日本全国に広まったきっかけが、和光市の「自立支援型の地域ケア会議」の実績が大きく関係しています。
和光市の地域ケア会議は自立支援型がメインです。キャッチフレーズは「介護保険からの卒業」
要支援者(自立度が高い)のケアプランを作成しサービスを導入する際に、市役所に栄養士や理学療法士などの各専門職が20人~30人ほど集まって、ケアマネジャーが作成したケアプランとサービス内容をチェックします。
この地域ケア会議でOKが出ないと、実際にデイサービスやヘルパーなどのサービスが使えない形となっています。
この地域ケア会議に出席するケアマネジャーは自分の作ったケアプランを20人~30人から意見を言われます。
つまり、担当ケアマネジャーが作ったケアプランが本当に高齢者の自立支援に適しているかを地域ケア会議で判断していくのです。ケアマネジャーの資質向上を目指す会議となっています。
ケアマネ業務をしている私としては、市役所の人や各専門職から自分のケアプランを寄ってたかって指摘されるのはめちゃくちゃプレッシャーになります。
もう公開裁判みたいな気持ちになります。マジでこんな会議参加したくない・・・
「介護保険からの卒業」というコンセプトのもとで行われた和光式地域包括ケアシステムでは
2013年に要介護者の認定率が全国平均の17.6%に比べて和光市は9.6%という驚異的な数値を叩き出しました!
つまり、元気な高齢者がたくさんいて、介護保険を使っていないよ!!ということになったのです。
和光市の実績は国政でも認められ2015年には安倍首相も和光市に足を運んでいます。
その後、たくさんの自治体で和光式の地域ケア会議を取り入れて、介護認定率の低下を実践してきました。そこで国は和光式の地域包括ケアモデルを全国的に広めることにしたのです。
そして2015年の介護保険の改正で、地域ケア会議の設置が各市町村に努力義務化されました。
和光式の地域包括ケアモデルを作り上げた人の現在
和光市を介護保険から卒業するまちにシステム化し、和光式の自立支援型地域ケア会議を考え出して実践してきたのが東内京一さん(元市企画部審議監)です。
自立支援型の地域ケア会議だけでなく、地域の実情を踏まえて介護予防の街を作りあげました。
・介護保険サービス事業所だけでなく地域住民にも自立支援の意識付。
・介護サービス以外にも豊富なメニューを用意。
・マシ-ントレーニングやパソコン教室、運動教室、英会話、囲碁クラブなど。
・高齢者福祉センターへの無料送迎バスの運行などなど。
市全体を介護予防の街に改革していきました。
しかし!
介護の世界では革命児だった東内京一さん、高齢者のお金を盗んで逮捕されました。
令和2年9月現在で計5回逮捕されています。
埼玉県和光市の60代男性が市に預けていたキャッシュカードを不正に持ち出し、男性の口座から現金480万円を引き出して盗んだとして、県警は26日、窃盗の疑いで、元市企画部審議監、東内京一容疑者(56)=詐欺罪で公判中=を再逮捕した。逮捕は5回目。
産経新聞より引用
非常に残念ですね。。。っていうか偉そうなこと言ってて、高齢者の金を盗むんじゃねーよ!!(怒)
東内京一さんの現在
東内京一被告の現在(令和3年9月17日)
市民から預かったキャッシュカードで、現金およそ7000万円を引き出し盗んだなどとして、業務上横領や詐欺などの罪に問われている和光市の元幹部職員に、さいたま地裁は懲役7年の実刑判決を言い渡しました。
yahooニュースより引用
起訴状などによりますと、元・和光市企画部審議監の東内京一被告57歳は、2012年から6年以上にわたって、自力で財産を管理できない男性や高齢の夫婦が市に預けたキャッシュカードを持ち出し、合わせておよそ7000万円を不正に引き出したほか、別の預かり金をだまし取るなど、業務上横領や詐欺などの罪に問われています。
東内被告は、2012年10月から2018年3月まで市の福祉事務所長と保健福祉部長を兼務していました。
17日の判決で、さいたま地裁の中桐圭一裁判長は、「職務上の地位を利用して自己の利益を図った非常に悪質な犯行」と指摘しました。
さらに、「福祉行政に対する社会の信頼を揺るがした点も軽視できない」として、懲役10年の求刑に対し懲役7年を言い渡しました。
約8000万円を不正に得たってすげーな。たぶんバレてない金もあるだろうから、1億円ぐらい盗ってるだろな・・・
自立支援型の地域ケア会議で思うこと
すべての自治体が和光式の地域包括ケアモデルを採用しているわけではありません。自立支援型地域ケア会議をしなくてはいけないという決まりもありません。
自治体によっては地域作りを中心にした地域ケア会議やネットワーク構築のための地域ケア会議を中心にやっても良いことになっています。地域の実情に合わせた地域ケア会を行っていくようになっています。
しかし、介護給付費の抑制に関する考えは国では今後も強くなっていくことは間違いありません。
なんせ、少子高齢化で保険料を集められる世代の人数が少なくなってきているので必然的に一人一人の負担が多くなります。
それを防ぐためには、高齢者にはなるべく元気になってもらって医療保険や介護保険を使わないようにしていかないと、子供達に大きな負担になってきてしまうのは事実なのですから!!
介護保険料は40歳になったら日本国民は払う義務を負っています。
令和2年の現在、東京23区だと1カ月の保険料が平均で約6,000円になります。和光市の保険料は現在なんと約4600円です。めちゃくちゃ保険料が安いです。
給料は増えないで保険料だけ増えていくと現在の日本の社会保障制度が維持できなくなってしまいます。
国民全体が社会保障制度のことを考えなければいけない時期がきているのかもしれません。
今回は以上でーす。