民生委員は簡単に言うと地域の身近な福祉の相談員です。
会ったことがないと思いますが民生委員は都会にも田舎にもいます。そして歴史は古く民生委員の活動は令和元年で100年を迎えました。
民生委員は、民生委員法を根拠とし、社会奉仕の精神をもって、常に住民の立場に立って相談に応じ、必要な援助を行い、社会福祉の増進に努めることを目的としています。
民生委員児童委員信条
1.わたしたちは、隣人愛をもって、社会福祉の増進に努めます。
1.わたくしたちは、常に地域社会の実情を把握することに努めます
1.わたくしたちは、誠意をもって、あらゆる生活上の相談に応じ自立の援助に努めます
1、わたくしたちは、常に公正を旨とし、人格と識見の向上に努めます。
社会福祉士国家試験では民生委員という言葉がちょくちょく出てきます。そして、かなりの頻度で出題されるので重要項目の一つです。
今回は民生委員についてわかりやすく紹介していきます。
民生委員は米騒動がきっかけ!
民生委員という制度自体が全国的に発展したきっかけとなったのが、大正時代の米騒動です。米騒動と聞くと江戸時代のことだと思っている人も多いと思いますが、実は第一次世界大戦後にも起きていたのです。
済世顧問制度
大正6(1917)年 当時の岡山県知事であった笠井信一が大正天皇から「岡山県の貧困の状況はどうか」と聞かれ貧困の実情を調査したところ、悲惨な生活状況にある者が一割程度いることが判明しました。
そこでドイツのエルバーフェルト制度を参考に、済世顧問制度を作りました。「防貧」を目的とし、貧民の自立を促すために物資を提供するのではなく、貧しい人の相談にのる済世顧問に任じられた地域の篤史家(篤志のある人。特に、社会奉仕・慈善事業などを熱心に実行・支援する人。)が相談にのりました。
この済世顧問制度が今でいう民生委員制度の始まりです。
方面委員制度
大正7(1918)年 第一次世界大戦で好景気に沸いた日本でありましたが、景気が良いのは金持ちばかり。一般庶民は貧乏な生活をしていました。そして富山県の漁村のおかみさん達が立ち上がり、米騒動の口火を切りました。
お米の値段はぐんぐんあがり、これじゃー食っていけないと全国に広がっていきます。国は軍隊を出して収めようとしますが、これに怒った国民が米屋を焼き討ちにしてしまいます。
全国に広がった米騒動ですが、大阪では騒動後の大正7(1918)年10月に大阪府知事の林市蔵が小河滋二郎とともに方面委員制度を創説しました。これもドイツのエルバーフェルト制度を参考にしています。
担当区域内の住民生活を調査し、生活困窮者を救済するという仕事を無給で行う方面委員が設置されました。
そして方面委員制度が民生委員制度へと変わりました。
民生委員とは
民生委員の配置は?
民生委員の配置は市町村のを単位とされていますが、その定数は厚生労働大臣の定める基準を参酌(他と比べて参考にすること)して、市町村長の意見を聞いて、都道府県の条例で定めるとされています。ややこしいです。
民生委員の数
民生委員・児童委員の人数は全国で238,416人となっています。(平成30年3月31日現在)(地区担当:216,517人、主任児童委員:21,899人)
男女比は男性4:女性6で女性の方が多くいます。
児童委員とは
児童や妊産婦に対しての相談員です。民生委員が兼任しています。(児童福祉法に規定されています。民生委員法ではないので注意!!)
児童委員だけを辞任することはできません。1994年からは、児童委員の職務に加えて、児童委員間の連絡調整などの職務の主任児童委員が設立され2001年の児童福祉法改正で法定化されました。主任児童委員は、厚生労働大臣が児童委員の中から指名して、区域は担当しません。
民生委員はどんな人?
民生委員は仕事を退職した後の男性や地域に長年住んでいる奥様方が民生委員を務める場合が多いです。年齢層は70代です。
任期は3年です。都道府県知事の推薦で、厚生労働大臣が委嘱(特定の仕事や役職を人に任せる)します。
身分は特別職の地方公務員でいながら民間のボランティアという位置づけです。
給料はありません。活動するための経費については支給されます。
立場は行政機関の協力機関です。
1946年の(旧)生活保護法では民生委員を補助機関にしました。1950年の(新)生活保護法では協力機関となっています。
民生委員の仕事
1.住民の生活状態を必要に応じ適切に把握しておくこと
厚生労働省HPより引用
2.生活に関する相談に応じ、助言その他の援助を行うこと
3.福祉サービスを適切に利用するために必要な情報の提供、その他の援助を行うこと
4.社会福祉事業者と密接に連携し、その事業又は活動を支援すること
5.福祉事務所その他の関係行政機関の業務に協力すること
6.その他、住民の福祉の増進を図るための活動を行うこと
民生委員の仕事は地域の住民の相談にのることです。相談件数の分野では「高齢者に関すること」が最も多いです。
民生委員は高齢福祉分野と連携することが多く、行政に頼まれて3年に1回、独居や高齢者だけの家に行き生活状況を確認するともあります。
そして、福祉に関する研修会や勉強会に参加しています。認知症サポーター養成講座だったり、生活困窮をテーマとした研修だったり、福祉祭りを手伝うこともあります。
そして、宿泊研修会もあります。そこでも災害のことだったり、障害者のことだったりと福祉に関する勉強をします。1年間に会議や研修会などがたくさんあり民生委員は忙しいです。
まとめ
民生委員で覚えるところ | |
済世顧問制度(1917年) |
岡山県知事の笹井信一が創設 ドイツのエルバーフェルト制度を参考 |
方面委員制度(1918年) |
大阪府知事の林市蔵が小河滋二郎と供に創設 ドイツのエルバーフェルト制度を参考 |
配置 |
市町村単位で配置 |
定数 |
238,416人(平成30年現在) 厚生労働大臣の定める基準を参酌して、市町村長の意見を聞き、都道府県の条例で定める |
任期 |
任期は3年(再任可) 都道府県知事の推薦で厚生労働大臣が委嘱する。 |
立場 |
特別職の地方公務員であり、民間ボランティア |
仕事 |
高齢者に関する相談が多い。 生活福祉資金貸付制度では民生委員による援助が行われる。 |
その他 | 給料は不支給。行政機関の協力機関。児童委員を兼任(児童委員だけを辞退できない) |
民生員制度設立で令和元年で100周年になります。仕事柄、民生委員の方々とはたくさん仕事をさせていただいています。
地域のことを真剣に考えて住民同士のつながりを大事にする人がほとんどです。(もちろんやる気のない人もいます。)自分たちが長く住んでいたところに愛着をもって地域の住民の方々を支えていっているのだと思います。
民生委員として活躍された鵜飼俊成氏は「民生委員の仕事というのは人情の発露である。科学的知識がいかにあっても人情の欠けたところに民生事業はない。民生委員の仕事は実に暖かいヒューマニズムの土台の上に咲く花である」
と活動を振り返っています。思いやりのある活動は今でも受けつがれていて、つながっているのだと思いました!
今回は以上でーす。
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