介護保険の枠組みの中では地域支援事業というのはとても分かりずらい事業になっています。介護保険のサービスは介護保険の申請をするまで基本的には利用しません。
しかしながら、65歳以上の高齢者にとって、介護保険を使わないで元気に過ごしたいと思っている人はたくさんいると思います。
この地域支援事業は社会福祉士やケアマネジャーの試験でも出てきます。ケアマネジャーの試験では超重要です。
そこで、地域支援事業の一つである地域包括支援センターに勤めている私が、解説したいと思います。
地域支援事業
地域支援事業とは
介護保険法第百十五条の四十五の規定に基づき、介護保険制度の円滑な実施の観点から、被保険者が要介護状態等となることを予防するとともに、要介護状態等となった場合においても、可能な限り、地域において自立した日常生活を営むことができるよう支援する事業である。
地域支援事業は、2006年4月より創設された事業で、高齢者の介護予防や地域での自立した生活を支援するため、地域の実情に応じた体制作りを行う事業です。
その名の通り地域を支援する事業です。全体は大きく3つの事業に分かれています。
介護予防・日常生活支援総合事業
市町村が地域の実情を考えて、住民たちやNPOなどに色々なサービスを担ってもらい、地域の支え合い体制づくりを推進し、要支援者等の方に対する支援をしていく事業です。
介護保険給付に頼らないサービスで支え合っていこう!
という事業です。
介護予防・生活支援サービス事業
利用対象者は、要支援者1、要支援2、生活支援サービス事業対象者が受けられる事業となります。
自立保持のために身体的・精神的・社会的機能の維持向上を目標としています。
生活支援サービス事業対象者とは
基本チェックリストというもの包括支援センターの職員などが利用者に行って、要介護状態等となるおそれの高い状態にあると認められる者になった場合は事業対象者になります。
介護予防・日常生活支援総合事業は、すべてケアマネジメントにより行われています。介護予防のプランとほぼ同じと考えていただいて大丈夫です。
メインは訪問介護(訪問ヘルパー)と通所介護(デイサービス)が介護保険の保険給付から市町村への事業に移行したということです。
2018年度から介護予防・日常生活支援総合事業に完全移行しています。
デイサービスやヘルパーは市町村が独自の事業を展開していけ!ということになったのです!
ボランティアとか民間独自のサービスを推進していって、あまり国からの財源を減らさないようにしたのが狙いです。
だから、介護度の低い要支援1や要支援2のヘルパーとデイサービスが介護保険の対象ではなくなって、介護予防・日常生活支援総合事業で行っていく形になりました。
一般介護予防事業
イメージ的には地域の運動教室だったり、公園の運動器具を利用する事業です。
65歳以上のすべてが対象です。ターゲット的に要支援を受ける前の凄く元気な人の事業です。
介護予防把握事業(閉じこもり等を把握し活動に繋げる)介護予防普及啓発事業(介護予防の啓発)、地域介護予防活動支援事業(住民主体の体操教室の支援)、一般介護予防事業評価事業(一般介護予防事業の評価)、地域リハビリテーション活動支援事業(リハビリ専門職の派遣)というものがあります。
包括的支援事業
包括的支援事業は地域包括支援センターの運営の事業とその他の事業になるのですが、全部ひっくるめて地域包括支援センターが行っている市町村もあります。
地域包括支援センターの運営
地域包括支援センターの主な仕事は4つに分類されます。以下の4つは地域包括支援センターの必須事業になります。
事業対対象者、要支援1、要支援2のケアプランを作る事業になります。介護予防・日常生活支援総合事業もここに入ります!
ヘルパーとデイサービス以外のサービスを要支援の人が使うと、介護保険からのサービスになります。福祉用具で手すりや歩行器を借りたり、訪問看護を使うなどです。
総合事業のケアプランと介護予防ケアプランを作る事業です。
プラン料は月1回、1件5,000円ぐらいが保険給付されます。そして、利用者の自己負担はなありません。プラン作成は民間のケアマネに委託される場合もあります。
これは65歳以上の生活相談に乗っていく事業になります。これは1件いくらという感じの事業ではなく、地域に住むすべての高齢者の相談に乗っていくのです。
介護保険の申請だったり、地域の運動教室の紹介だったり、家の中に手すりを付けたい。近所に心配な高齢者がいる。高齢夫婦で住んでいるんだけど、どこか入居できる施設はないか?など高齢者の相談に乗る事業です。
高齢者が地域において、尊厳のある生活が送れるように、権利を擁護していきます。
具体的には、成年後見制度の活用促進、老人福祉施設等への措置の支援、高齢者虐待への対応、困難事例への対応、消費者被害の防止などの業務を行っていきます。
地域包括支援センターは高齢者虐待対応の中核機関のひとつとなります。
事業の名前が長くて何を言っているかわからないと思います。
地域のケアマネジャーを支援する事業です。
地域のケアマネジャー間のネットワークを構築し、地域のおける、様々な社会資源が活用できるように連携・協力体制を整備する事業になります。
これは、地域のケアマネジャー向けに勉強会や集まれる場所を作ります。地域包括支援センターが地域のケアマネジャー向けに勉強会や事例検討会を企画するのです。
また、地域のケアマネジャーが自分の持っているケアプランで困っていることの相談にのります。
認知症総合支援事業
認知症施策総合推進戦略(新オレンジプラン)を基本として、2015年から全市町村に実施が義務付けられました。
認知症の疑いのある人を早期診断・早期対応に繋げていきます。認知症初期集支援チームというものが自宅訪問などのアウトリーチによる支援をしていき、介護保険サービスにつながっていない人をつなげていく事業だったり
地域包括支援センターや社会福祉協議会の中に認知症地域支援推進員という専門職が置くこともしています。
認知症地域支援推進員は医療・介護等の支援ネットワーク構築、地域の認知症対応力向上のための支援、認知症の人や家族との相談支援を行っていく専門職となります。
生活支援体制整備事業
生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)を配置して、ボランティア等の生活支援の担い手の養成、発掘等の地域資源の開発・ネットワーク化をしていく事業です。
この職種は地域作りの専門職です。この生活支援コーディネーターの配置が地域包括支援センターになっている自治体もあります。
社会福祉協議会に配置されたり、市区町村に配置されたりする場合もあります。
地域ケア会議推進事業
地域ケア会議は福祉関係者や地域の人で集まり会議します。
地域ケア会議には5つの機能(個別課題解決機能 ネットワーク構築機能 地域課題発見機能 地域づくり・資源開発機能 政策形成機能)があります。
市町村が中心にやってく事業ですが、地域包括支援センターでも行われます。
【介護保険の裏事情】自立支援型の地域ケア会議の本当の目的とは?
在宅医療・介護連携推進事業
市町村が主体となり、地区医師会等と連携して地域の現状把握・連絡調整等に取り組んでいく事業です。都道府県は、市町村を後方から支援していきます(努力義務)
市町村の職員や地域包括支援センターの職員が医師会が開催する会議に参加したりします。
つまり医療関係者と仲良くする事業です
任意事業
その他、地域にかかわる事業になります。市町村が必要と判断し実施する事業になります。
介護給付等費用適正化事業
介護給付等が適正に使われているかチェックする事業です。ケアマネジャーが恐れているのがこの事業の中のケアプラン点検です。他にも認定調査状況チェックや住宅改修等の点検などがあります。
家族介護支援事業
家族に対する介護教室の開催や認知症高齢者の見守りなどを行う事業です。認知症の方を介護している家族に安くGPS付きの徘徊センサーを給付している自治体もあります。
その他の事業
成年後見制度利用支援事業を行っていたり、高齢者の杖やリハビリシューズを安く提供している自治体もあります。配食サービスも自治体がお金を少し出して安くなっているところもあります。
地域支援事業まとめ
地域支援事業の実施主体は基本的に市町村です!!任意事業以外は地域支援事業の必須事業となります。どの市町村でも行っています。
地域支援事業は、社会福祉士の試験でもケアマネの試験でも、事業の名前をこと細かく覚える必要ありません。例えば
地域包括支援センターの事業は地域支援事業だったなぁ
程度で大丈夫です。そして国は社会保障給付費の増大を防ぐために、地域の力を借りようとしています。そこを念頭に置いて勉強を進めていくと分かりやすいです。
地域支援事業 | 介護予防・日常生活支援総合事業 | 介護予防・生活支援サービス事業 |
一般介護予防事業 | ||
包括的支援事業 | 地域包括支援センターの運営 | |
認知症総合支援事業 | ||
生活支援体制整備事業 | ||
地域ケア会議推進事業 | ||
在宅医療・介護連携推進事業 | ||
任意事業 | 介護給付等費用適正化事業 | |
家族介護支援事業 | ||
その他の事業 |
福祉業界は地域ブームです。地域、地域うるさいです。
病院だろうが診療所だろうが、特別養護老人ホームだろうが、老人保健施設だろうが、有料老人ホームだろうが、障害者施設だろうが、学校だろうが児童福祉施設だろうが、みんな地域の一括りとなって、地域共生社会を作っていこうという方針を打ち出しています。
この流れの今後の福祉業界の大きなテーマになってくると思います。地域支援事業は社会福祉士や介護支援専門員の試験でも重要な項目となってきます。
地域ブームに乗り遅れないようにしましょう。
今回は以上でーす。
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